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I邸ドラム室


I邸は傾斜地に建つ木造二階建ての建売住宅です。
その構造上一階床下には地下空間があり、そこをスタジオに有効利用する見込みで購入されました。


工事にあたっての課題

  @防音の悩み
「閑静な住宅地」「隣家との距離が80センチ」という遮音上不利な立地状況にあります。
プロドラマーの音量に耐えうる十分な遮音性能が必要不可欠な状況でした。
Aスタジオ計画予定スペースの 床下結露による水の問題

 

スタジオ計画スペースである地下空間の壁は、建物の基礎と傾斜地の擁壁を兼ねており、約半分(1m〜1.5m)が地中に埋まっていました。

実はその地下空間には、原因不明の水たまりがあり(ひどい雨漏りか、地下水が出てきているのではないかと思えるほど)、この水たまりの対策に悩まされて約2年間も手がつけられない状況だったそうです。

当社は、その原因が“結露現象”だということを解明し、断熱や換気扇による有効な対策により不安を解消してから工事に着手しました。


スタジオ設計にあたってのコンセプト

1.居心地を変える小さな窓と遮音対策

2.ピアノ室と兼用できるドラムスタジオ

I邸ドラム室





1.居心地を変える小さな窓と遮音対策
  I邸スタジオ遮音測定
グラフを拡大する>>

スタジオの約半分は木造で、隣家とは80センチしか離れていないという遮音上の大きな課題がありました。

長年のドラマー生活において、自宅で時間を気にせず自由に叩きたいという願望は当然のことです。

Iさんの当初のご要望は「窓は要らない」「防音第一」ということでした。しかし、当社はあえて小さな窓をご提案しました。小さな窓でも、閉塞感の緩和や居心地の向上が見込まれ、そのうえで必要な遮音性能が得られます。

また、隣家の外壁面には浴室の窓があるため、スタジオの窓が対向しないようにしました。

 

遮音性能結果は以下のようになりました。

窓前 Dr'-65 (窓は三重独立構造)

外壁 Dr'-75

※数値は5地点の平均測定値

 

窓をつけることで遮音性能が悪くなるのでは、とI さんは半信半疑でしたが実際に音出しをして納得され喜んでいただきました。


2.ピアノ室と兼用できるドラムスタジオ
 

I邸スタジオグラフ

 

床下の1.5mを加えて天井高3.5mの空間が生まれたものの、実は奥様のピアノ室と共用空間という難題がありました。

平面の広さは十分あるのですが、ピアノとドラムが同一空間にある中で、両楽器ともに音響を満足させるのは大変難しいことです。

予定通り遮音工事が終了し遮音測定の結果もOK。吸音内装工事に入る前の段階で、I さんは試奏をされました。

その際、「壁の吸音は必要ないかもしれない」と感じたということでした。非常に高い天井には、吸音面を少し設けているせいもあったのかもしれません。

そのため、ドラムセット両脇の壁に吸音パネルを一枚ずつ設置するという、最小限のパネル数に変更となり、大幅に吸音を減らすことになりました。

I さんの演奏スタイルは、大音量の(耳栓を要する)反面、非常に繊細な音色を表現し、跳ね返り音を感じながらプレイするというもので、ある程度のアコースティックな響きは必要不可欠だったようです。

その結果、ピアノにとってもデッド過ぎず「ドラムとピアノの響きの両立」という難しい問題は霧消してしまいました。


担当者のコメント -よい響きの設計ポイント-
 

クラシックなどのアコースティック楽器は「やや長めの響き」、音の大きい打楽器や電気楽器は「やや短めの響き」にするというのが定説であり、当社もそのような方向性で吸音の設計をしてきました。

しかし、多くの実例でクライアントの反応をみると、吸音による響きの調整だけで部屋の響きが左右するとはいえない気がします。 (調整は、中低音〜高音の領域しかできない)

このスタジオの特徴は、吸音パネルが少なくても低音のリズムは明瞭で歯切れがよく、中高音の反射はクリアーで、音が大きくてもうるさく感じないということにあります。

良い響きの部屋を作るには、吸音だけでない下記のような設計のポイントがあるのです。

@定在波が目立たなく自然ですっきりとした低音の響きになるように、部屋の形を決める。

※「定在波が目立たない」とは、共鳴による低音の強烈なクセがないということです。

A雑味がないクリアーでしっかりした反射音を得るために、質量があり剛性の高い床・壁・天井面を造る。

上記のようなポイントを押さえた設計をしていたので、「吸音パネルがたった2枚で良い」というスタジオになった事は、(極めてめずらしい事ではありますが)想定内の結果でした。

このようにして、ジャズドラムとクラシックピアノがほぼ満足できる演奏空間に落ち着きました。




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